春日井建百首選(大塚寅彦選)
『夢の法則』
ちちははのこときれむ彼方ひかり零(ふ)るその日美しくわが老ゆべし
星空のカムパネルラよ薄命を祝ふ音盤(ディスク)のごと風は鳴る
われよりも烈しきものに打たれたく風哭く冬の夜をさまよへり
ジイドよわれは情熱を欲る日もすがら金いろの裸麦に埋れて
夏の嵐に暗く肉感目ざめつつ誠実(まこと)に執する日記をひらく
わが歓喜告ぐべきひとと帆を繰(く)りし日は暮れ初めつ青潮のうへ
純潔の時はみじかく過ぎ去らむわれに透過光するどき汀
降る雪の空に青ばむ少年の沈思をつつむにふさはしき雪