2011年7月1日(長谷川と茂古)
レディ・ガガが来日中である。ニュースが気になるわたしは、リトル・モンスターになりつつあるのかもしれぬ。さて、結社誌6月号から。
嗚呼、空に太陽がある、ひとまずは狂つたピアノを弾くのであつた 菊池裕
一読して、燃えるピアノと山下洋輔の映像が浮かんだ。あれは1973年、粟津潔氏自宅近くの海岸でのこと。炎を上げようが、ぎりぎりまでピアノ弾きはピアノを弾く。天変地異や事故が起ころうと、それが自分に及ばない限り、日常は繰り返される。たとえ、違和感を持ったとしても、だ。「ひとまずは」がいい。
遠雷のやうに氷の落つる音聞きつつ厨に読むファンタジー 紀水章生
わたしも台所で本を読むことが多い。作者は、いま読んでいるファンタジーの世界に遊びながら、冷蔵庫の中で氷が落ちる音を遠雷のようだと認識している。現実と虚の世界が一首のなかで表裏一体となった。
天道虫ほどの小さき人になり風鈴草の花に入りたし 玉田成子
風鈴草のベル形の花は、なんとも可愛い。その中に入りたいのだが、天道虫そのものではなく、天道虫くらいの大きさの人になって、というところが面白い。
続いて、角川「短歌」7月号から。
こんなふうに背中合はせのまま君は君の夜明けを眺めればいい 山田航
今様の歌い出し「こんなふうに」は、読者をぐいっと歌のなかへと引き込む。この歌の前に、「ブックエンドくらゐの距離をおいたままふたりは日々に許されてゐた」とあるから、膝を抱えて背中合わせに座る二人を想像するに難くない。「フタリダイアリー」の一連は、オフコースの『思いのままに』の世界。こちらは、<君は君の歌うたえ>であるが。若い時の息苦しさ、切なさにあふれている。
『新明解国語辞典』のもの深さ「摩羅」引きたまへ感じ入るべし 島田修三
迢空賞受賞第一作「足どまり」から。赤瀬川原平のベストセラー『新解さんの謎』で一躍有名になった『新明解国語辞典』。言葉の解釈においては、他の国語辞典の追随を許さない。で、引いてみた。・・・うーむ、なるほど、と感じ入った次第。